鷹校生と読書

北棟2Fの図書館。蔵書は約56000冊。
生徒たちは「朝読書」の本を探したり、お目当ての雑誌をめくったり。自習する生徒もたくさんいます。

今年度、鷹校では“ブックメール”という取り組みをしました。

「コロナ禍で学校や地域の図書館が使えない。でももっと本が読みたい」
そんな生徒たちの声を受け、学校図書館が郵送(無料)で書籍の貸し出しを行ったのです。
同窓会の厚意により「図書貸出基金」が設立され、PTAも書籍送付用のレターパックを寄付しました。
“ブックメール”は図書館の在庫が少なくなるほどの盛況ぶりだったようです。

『FACT FULNESS』ハンス・ロスリング著と9期生学年通信『Quest3』

臨時休業明けに配布された3年生(9期生)の学年通信『Quest3』に、ひとりの生徒の読書感想文が掲載されました。
本のタイトルは『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』。大学生の一般教養の教科書としても使われている本です。感想文全文を紹介します。

 

あ、人生変わったかも。

「あ、人生変わったかも」そう思わされたのは、スウェーデン人のハンスロスリングが書いた「FACT FULNESS」という一冊の本だった。

この本は貧困を例とした統計データや世界の見方を、10の人間本能から解体している。その10の人間的本能には分断本能、直線本能、恐怖本能、犯人捜し本能、焦り本能などがある。どれも著者の考えだしたもので、一つ一つに具体例と対策方法が書かれている。

この本を読んだ後と前では全くと言っていいほど世界に対する自分の意見が異なっていた。本を読み終えた後に自分のファーストステージ論文を振り返ってみた。当時の自分は世界をネガティブに考えすぎていたが、今では俯瞰することもできるようになり今までのようなマイナス的思考以外の見方ができる。この本で新たなものの見方を身につけることができた。

さらにこの本を読んで学んだことは世界の正しい見方だけではない。無論、主題は統計による世界の見方であるが、この本には世界の見方に加え自身を見返すことの意義や醍醐味が述べられている。人間の本能を理解し心情をコントロールすることは、大学で注目されているリベラルアーツにもつながると考えられる。また他者の心理をコントロールできるようになれば、社会での商取引にも有効活用できる。

新型コロナウイルスのパンデミックが起こり始めた時、各国の政府が様々な対応を取った。アメリカやヨーロッパは多くのデータを公開し厳重な対策をしていたが、日本は少し異なっていた。基本方針は経済を止めずに流行を終わらせるというもので外出を法律で制定することはなかった。データ上でも感染者及び死者は少なく、政府は対策に成功したと述べていた。この本を読んだ後の私は「データの内訳は何だろうか」と考えることができた。もしそのデータの内訳が私たち国民の求めるものと異なっていたら話にならない。しかし、以前の私であれはそのように疑うことはできないだろう。疑うことができるようになったのはもちろんこの本のおかげだ。この本で一度疑ってみるという技術を身につけることができた。

全てに対して「世界にはこんな見方もあったのか」と納得させられる内容であった。今までもたくさんの見方をしたいと考えていたが、それでもまだ一部しか見られていなかったことに気づかされるのと同時に、この本がふたを開けてくれた。正反対の見方をすることに楽しさを抱くようになった。

また、本能のコントロールでは自分を見つめなおすきっかけとなり、アンガーマネジメントなどを含む心理学やリベラルアーツへの興味につながった。まだ、将来が決まっていない私にとってこれは大きな一歩であり、学習の価値を発見することができた。

そして何より、この本との出会いは人生の転機のようになったと感じる。新型コロナウイルスにより長い休校期間が続きいわゆる暇疲れというものが現れがちであったが、今まで興味を持ったことのない教養学に魅かれ、世界を俯瞰してみることはとても楽しく、気分のリフレッシュともなった。

自分の人生に大きく関わったとも考えられるこの本をきっかけに、より多くの見方を知り自分の未来への希望を高めたい。

前期生徒会会長 山口 真季

 

学年通信は担任団の先生の言葉でしめくくられています。
「きっと、皆の中にはこの生徒以外にも、考え方が変わり新しいスタートを切ろうとしている人がたくさんいると思います。この期間で、成長した君たちに大いに期待しています」


読書の秋です。
親が子どもの、子どもが親の本を、と、たまには交換して読んでみるのもおもしろいかもしれませんね。